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なぜ「顧問契約がないと不安」と感じるのか?

 前回は、このシリーズの目的と、読者から寄せられた「顧問契約がないと不安」という声についてお伝えしました。今回は、なぜ多くの経営者が「顧問契約がないと不安」と感じるのか、その理由を分析します。不安の正体が分かれば、不安は半減します。一緒に、その不安の正体を見ていきましょう。

目次

  1. 「顧問契約=安心」という刷り込み

  2. 社労士業界の営業トーク

  3. 実際に必要なサポートとは何か

  4. 不安の正体を明らかにする

  5. 「不安」と「実際のリスク」は別物

  6. 今日のまとめ

  7. 次回予告

1. 「顧問契約=安心」という刷り込み

多くの経営者が「顧問契約がないと不安」と感じる最大の理由は、

「顧問契約=安心」という刷り込みが、長年にわたって行われてきたから

です。


どこから刷り込まれるのか?

この刷り込みは、様々な場面で行われています。

◆社労士事務所のホームページ

 多くの社労士事務所のホームページには、顧問契約の料金しか掲載されていません。

単発料金の記載はなく、「社労士=顧問契約」という印象を与えます。


◆税理士からの紹介

 税理士から社労士を紹介される際、多くの場合、顧問契約を前提とした紹介になります。

「社労士と顧問契約を結んでおいた方が安心ですよ」

こうした言葉により、顧問契約が当たり前だと思い込んでしまいます。


◆経営者仲間の話

「うちは社労士と顧問契約を結んでいる」

経営者仲間からこうした話を聞くと、「自分も顧問契約を結ばなければ」と思ってしまいます。


◆インターネットの情報

「社労士 選び方」「社労士 費用」などで検索すると、ほとんどが顧問契約を前提とした情報です。

単発手続きという選択肢があることすら、知る機会がありません。


結果として

こうした様々な場面での刷り込みにより、多くの経営者が

「社労士=顧問契約」

「顧問契約がないと不安」

と思い込んでしまうのです。

しかし、これは本当でしょうか?


2. 社労士業界の営業トーク

社労士業界には、顧問契約を勧めるための営業トークがいくつかあります。

これらのトークを知ることで、「顧問契約がないと不安」という感情がどこから来るのかが見えてきます。


営業トーク①:「いつでも相談できる安心感」

「顧問契約を結んでいれば、いつでも気軽に相談できますよ」

一見、魅力的に聞こえます。

しかし、実際には:

  • 「いつでも」と言いながら、返信が遅い

  • 「気軽に」と言いながら、実際には相談しづらい雰囲気

  • 年間を通じて相談することがほとんどない

前回シリーズで紹介した事例では、「いつでも相談できる」はずの顧問契約でも、問い合わせへの返信が遅く、対応が悪いケースが多くありました。


営業トーク②:「緊急時に対応できます」

「顧問契約を結んでいれば、緊急時にすぐ対応できます」

これも魅力的に聞こえます。

しかし、実際には:

  • 顧問契約を結んでいても、手続き完了まで1ヶ月以上かかる

  • 緊急時でも「確認します」「処理中です」と言われるだけ

  • 後回しにされる企業もある

顧問契約があるからといって、緊急時に優先してもらえるとは限りません。


営業トーク③:「法改正に対応できます」

「顧問契約を結んでいれば、法改正の情報をお知らせします」

これも重要に聞こえます。

しかし、実際には:

  • 法改正の情報が来ない

  • 来ても、形式的なお知らせだけ

  • 実際の対応は別料金

顧問契約を結んでいても、法改正への実質的な対応がされていないケースもあります。


営業トーク④:「継続的なサポートが必要です」

「労務管理は継続的なサポートが必要なので、顧問契約が必須です」

これも説得力があるように聞こえます。

しかし、実際には:

  • 手続きは年に数回程度

  • 労務相談もそれほど頻繁ではない

  • 継続的なサポートと言っても、実際には何もしていない

本当に継続的なサポートが必要なのは、従業員50名以上の企業や、毎月入退社がある企業など、限られた企業だけです。

これらの営業トークの共通点

これらの営業トークに共通しているのは、

「顧問契約がないと困る」という不安を煽る

ということです。

「いつでも相談できない」 「緊急時に対応してもらえない」 「法改正に対応できない」 「継続的なサポートがない」

こうした不安を感じさせることで、顧問契約を結ばせるのです。


3. 実際に必要なサポートとは何か

では、実際に企業が社労士に必要とするサポートとは、何でしょうか?

従業員50名未満の企業を例に考えてみましょう。


年間で発生する手続き

◆定期的な手続き(別料金):

  • 算定基礎届(年1回・7月)→ ほとんどの事務所で別料金

  • 労働保険の年度更新(年1回・7月)→ ほとんどの事務所で別料金


◆不定期な手続き:

  • 入社手続き(年に数回程度)

  • 退社手続き(年に数回程度)

  • 扶養異動届(発生した時)

  • 月額変更届(昇給・降給があった時)


◆その他:

  • 36協定届(年1回・提出期限前)

  • 就業規則の変更(必要に応じて)


労務相談

  • 労働時間の管理についての相談

  • 休暇制度についての相談

  • 賃金計算についての相談

  • 従業員対応についての相談

これらは、毎月発生するわけではありません。


実際の頻度

従業員50名未満の企業の場合、顧問契約で実際に依頼する内容は:

  • 入退社手続き:年に数回程度

  • 扶養異動届:年に0〜数回程度

  • 月額変更届:年に0〜1回程度

  • 労務相談:年に0〜数回程度

つまり、年間を通じて手続きや相談が全くない企業も多く、あったとしても年に数回程度です。

算定基礎届と年度更新は、ほとんどの社労士事務所で別料金のため、顧問契約の中に含まれません。

結果として、毎月顧問料を払っているのに、実際には年間で何もしてもらっていない、または数回程度しか使っていないという企業がほとんどなのです。


本当に必要なサポート

企業が本当に必要としているのは:

  1. 必要な時に、確実に対応してもらえること

  2. 手続きが正確であること

  3. 法令リスクを見逃さないこと

  4. 料金が明確であること

  5. いざという時に頼れること

「毎月顧問料を払い続けること」ではありません。

年間で数回しか使わないのに、毎月顧問料を払い続ける必要があるのでしょうか?


4. 不安の正体を明らかにする

ここまで見てきたことを整理すると、「顧問契約がないと不安」という感情の正体が見えてきます。


不安の正体①:刷り込みによる思い込み

「社労士=顧問契約」という刷り込みにより、顧問契約がない状態を想像できない。

想像できないから、不安に感じる。


不安の正体②:営業トークによる煽り

「顧問契約がないと困る」という営業トークにより、不安が増幅される。

実際には困らないのに、困ると思い込んでしまう。


不安の正体③:情報不足

単発手続きという選択肢があることを知らない。

知らないから、他の選択肢を考えられない。


不安の正体④:具体的なイメージができない

単発手続きで実際にどう運用するのか、具体的なイメージができない。

イメージできないから、不安に感じる。

つまり

「顧問契約がないと不安」という感情の正体は、実際のリスクではなく、「知らないこと」「イメージできないこと」への不安なのです。


5. 「不安」と「実際のリスク」は別物

ここで重要なのは、

「不安」と「実際のリスク」は別物

だということです。


不安はあるが、実際のリスクは低い例

例①:飛行機への不安

多くの人が飛行機に不安を感じますが、統計的には自動車よりもはるかに安全です。

不安を感じるからといって、実際のリスクが高いわけではありません。


例②:単発手続きへの不安

「顧問契約がないと不安」と感じるからといって、実際に困るわけではありません。

実際には、単発手続きで十分に対応できる企業が多いのです。


実際のリスクを確認する

不安を感じた時に大切なのは、

「実際にどんなリスクがあるのか?」

「そのリスクは本当に起こるのか?」

を冷静に確認することです。

次回以降の記事では、この「実際のリスク」について、一つひとつ検証していきます。

  • 緊急時に本当に対応してもらえないのか?

  • 相談したい時、本当に相談できないのか?

  • 年次手続きは本当に忘れてしまうのか?

  • 法改正に本当に対応できないのか?

これらを検証することで、不安が「実際のリスク」なのか、「思い込み」なのかが明らかになります。


6. 今日のまとめ

今回は、「顧問契約がないと不安」と感じる理由を分析しました。

不安の正体:

  1. 「顧問契約=安心」という刷り込み

  2. 社労士業界の営業トーク

  3. 情報不足

  4. 具体的なイメージができないこと

重要なポイント:

  • 「不安」と「実際のリスク」は別物

  • 不安を感じるからといって、実際に困るわけではない

  • 実際のリスクを冷静に確認することが大切

不安の正体が分かれば、不安は半減します。

そして、次のステップは、「実際のリスク」を一つひとつ検証していくことです。


7. 次回予告

次回は、第3回「『毎月顧問料を払わないと、いざという時に対応してもらえないのでは?』」をお届けします。

最も多い不安の一つ、「緊急時の対応」について詳しく解説します。

  • 緊急時とは、具体的にどんな場面か

  • 単発手続きでも緊急時に対応してもらえるのか

  • 顧問契約があれば、緊急時に優先してもらえるのか

  • 実際の対応事例

  • 緊急時に困らないための準備

「緊急時に対応してもらえない」という不安が、本当にリスクなのか、思い込みなのか。

実際の事例を基に、検証していきます。

次回もぜひご覧ください。

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