社労士が解説:労務管理実践編② 労働時間管理の実務と法的リスク回避
- 代表 風口 豊伸
- 4月28日
- 読了時間: 17分
はじめに
前回の記事では、従業員のライフサイクルに沿った「採用から退職まで」の労務管理手続きと注意点について解説しました。適切な手続きの実施と書類管理が、法的リスクを回避し、円滑な人事労務管理の基盤となることをお伝えしました。
今回は労務管理実践編の第二回として、企業の労務リスクの中でも特に注意が必要な「労働時間管理」に焦点を当てます。働き方改革関連法の施行により、長時間労働の是正や労働時間の適正な把握がこれまで以上に厳しく求められています。実際に、労働基準監督署の調査でも、労働時間管理の不備が最も多く指摘される項目の一つとなっています。
本記事では、法定労働時間と割増賃金の基礎知識から、労働時間の適正な把握方法、様々な労働時間制度とその活用法、さらには長時間労働対策まで、実務に即した内容で解説していきます。人事労務担当者はもちろん、管理職や経営者の方々にとっても、リスク回避と生産性向上の両立を図るための重要な情報となるでしょう。
目次
労働時間管理の基礎知識
法定労働時間と法令遵守の重要性
労働時間の適正な把握方法と「自己申告制」の落とし穴
管理監督者と労働時間管理の関係
割増賃金の正しい計算方法
時間外・休日・深夜労働の区分と割増率
割増賃金計算の基礎となる賃金の範囲
固定残業代制度の正しい運用方法
多様な労働時間制度の活用法
変形労働時間制(1ヶ月・1年単位)の導入と運用
フレックスタイム制の正しい理解と活用
事業場外みなし労働時間制の適用条件
裁量労働制の対象業務と導入手続き
テレワークと労働時間管理
テレワークにおける労働時間把握の方法
中抜け時間の取扱いと休憩時間管理
ICTツールを活用した労働時間管理
長時間労働対策と健康管理
時間外労働の上限規制と36協定の正しい締結方法
長時間労働者への医師による面接指導
勤務間インターバル制度の導入と運用
労働時間管理とトラブル対応
労基署調査でよく指摘される事項と対応策
残業代請求トラブルと予防法
まとめ:持続可能な労働時間管理の実現に向けて
1. 労働時間管理の基礎知識
法定労働時間と法令遵守の重要性
労働基準法では、労働時間は原則として「1日8時間、1週40時間」を超えてはならないと定められています(法定労働時間)。この法定労働時間を超えて労働させる場合には、労使協定(36協定)の締結・届出と割増賃金の支払いが必要です。
法定労働時間を遵守することは、単なる法令遵守の問題ではなく、従業員の健康維持、過重労働による健康障害の防止、ワークライフバランスの確保という重要な意義を持っています。また、最近では過労死や過労自殺に関連した企業の法的責任を問う訴訟も増加しており、適正な労働時間管理は企業経営上のリスク管理としても重要性を増しています。
労働時間の適正な把握方法と「自己申告制」の落とし穴
労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」を意味します。実作業に従事していなくても、指示待ち時間や研修時間なども労働時間に含まれる点に注意が必要です。
労働時間の把握方法については、厚生労働省のガイドラインで以下のような方法が推奨されています:
客観的な記録による把握
タイムカードによる記録
ICカード等の電子的な記録
PCのログイン・ログアウト時間の記録
自己申告制を採用する場合の注意点
労働者に対して労働時間の実態を正しく記録するよう十分な説明を行うこと
実際の労働時間と自己申告の記録に乖離がある場合は実態調査を行うこと
労働時間の過少申告を勧奨したり、労働時間の正しい申告を阻害する措置を講じないこと
自己申告制には「申告漏れ」や「過少申告」のリスクがあります。特に、「残業申請制」と称して、事前申請がない残業は労働時間として認めないという運用は法的に問題があります。労働時間は実態に即して把握する必要があり、たとえ申請がなくても実際に働いた時間は労働時間として扱わなければなりません。
管理監督者と労働時間管理の関係
労働基準法第41条では、「管理監督者」については労働時間、休憩、休日に関する規定が適用除外となっています。しかし、この「管理監督者」の範囲は非常に限定的で、単に「課長」「部長」といった肩書だけで判断されるものではありません。
管理監督者の判断基準:
経営に関する決定に参画し、労務管理上の指揮監督権限を有していること
自己の勤務時間について裁量があること
その地位にふさわしい待遇(賃金等)が与えられていること
実務上、多くの企業で「名ばかり管理職」問題が発生しています。役職者であっても実質的に上記条件を満たさない場合は管理監督者とはみなされず、時間外労働に対する割増賃金の支払義務が生じます。この点についての誤った解釈は、後に大きな残業代請求リスクにつながる可能性があるため、慎重な判断が必要です。
2. 割増賃金の正しい計算方法
時間外・休日・深夜労働の区分と割増率
労働基準法では、法定労働時間を超える労働や法定休日における労働、深夜(午後10時から午前5時まで)の労働について、割増賃金の支払いを義務付けています。
割増賃金の区分と割増率:
時間外労働(法定労働時間超):25%以上
法定休日労働:35%以上
深夜労働(22時〜5時):25%以上
時間外労働かつ深夜労働:50%以上(25%+25%)
法定休日労働かつ深夜労働:60%以上(35%+25%)
月60時間超の時間外労働:50%以上
特に注意すべき点として、所定休日(会社独自に定めた休日)と法定休日(法律で定められた週1日または4週4日の休日)は区別する必要があります。所定休日労働は時間外労働の割増率(25%以上)が適用され、法定休日労働の割増率(35%以上)は適用されません。
割増賃金計算の基礎となる賃金の範囲
割増賃金の計算の基礎となる賃金は、原則として「通常の労働時間または労働日の賃金」ですが、以下の手当は割増賃金の計算基礎から除外できます(労働基準法第37条第5項):
家族手当
通勤手当
別居手当
子女教育手当
住宅手当
臨時に支払われた賃金(結婚祝金など)
1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
これ以外の手当(役職手当、資格手当、職務手当など)は割増賃金の計算基礎に含める必要があります。この計算を誤ると、割増賃金の不足が生じ、後に是正を求められるリスクがあります。
固定残業代制度の正しい運用方法
昨今、「固定残業代(みなし残業代)制度」を採用する企業が増えていますが、その運用には注意が必要です。固定残業代制度とは、あらかじめ一定時間分の残業代を基本給や手当に含めて支払う制度です。
固定残業代制度の適正な運用条件:
労働契約や労働条件通知書等で、固定残業代の金額と対応する時間数を明示すること
基本給と割増賃金部分を明確に区分すること
固定残業時間を超えた場合は追加で割増賃金を支払うこと
実際の時間外労働が固定時間に満たない場合でも全額支払うこと
裁判例では、上記条件を満たさない固定残業代制度は無効とされるケースが多く、結果として基本給から割増賃金を再計算して支払う必要が生じています。導入する際は、労務専門家に相談の上、慎重に制度設計を行うことをお勧めします。
3. 多様な労働時間制度の活用法
変形労働時間制(1ヶ月・1年単位)の導入と運用
業務の繁閑に応じて労働時間を柔軟に配分できる「変形労働時間制」は、効率的な人員配置と残業削減に有効です。
1ヶ月単位の変形労働時間制:
導入方法:就業規則や労使協定で定める
メリット:1ヶ月以内の期間で労働時間を調整でき、繁忙期の残業を削減できる
注意点:各日・各週の労働時間をあらかじめ具体的に定める必要がある
1年単位の変形労働時間制:
導入方法:労使協定の締結と労働基準監督署への届出
メリット:季節変動のある業種で効果的(小売業、観光業など)
制限事項:
対象期間における労働日数は1年あたり280日以内
特定期間(連続する3ヶ月)の総労働時間は、その期間の法定労働時間の総枠を超えられない
1日の労働時間の限度は10時間、1週の労働時間の限度は52時間
変形労働時間制を導入する際は、対象期間全体の労働時間を適切に設定し、特定の時期に過重な労働が集中しないよう注意する必要があります。また、導入後も実態に合わせて定期的に見直しを行うことが重要です。
フレックスタイム制の正しい理解と活用
フレックスタイム制は、一定の期間(清算期間)における総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業・終業時刻を自由に決定できる制度です。
フレックスタイム制の導入条件:
就業規則等での規定
労使協定の締結(対象従業員の範囲、清算期間、清算期間における総労働時間、コアタイムやフレキシブルタイムを定める場合はその時間帯)
2019年の法改正ポイント:
清算期間の上限が1ヶ月から3ヶ月に延長
清算期間が1ヶ月を超える場合、月ごとの労働時間の上限設定が必要
フレックスタイム制は、従業員の自律性を高め、ワークライフバランスの向上に寄与する一方で、労働時間管理が複雑になるという側面もあります。特に、コアタイムを設けない「スーパーフレックス」を導入する場合は、労働時間の適正な把握と健康管理に一層の注意が必要です。
事業場外みなし労働時間制の適用条件
営業職など、事業場外で労働する従業員の労働時間管理については、「事業場外みなし労働時間制」が適用できる場合があります。
適用条件:
労働者が事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばない
労働時間を算定することが困難である
みなし時間の設定:
原則:所定労働時間働いたものとみなす
通常、所定労働時間を超えて労働することが必要な場合:労使協定で定めた時間
テレワークの普及により、事業場外みなし労働時間制の適用について疑問が生じることが増えています。テレワークであっても、使用者がメールや業務支援ツールで労働時間を把握・管理できる場合は、みなし労働時間制の適用は認められません。適用を検討する際は、実態に即した慎重な判断が必要です。
裁量労働制の対象業務と導入手続き
裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や時間配分について労働者の裁量に委ねる必要がある業務に適用できる制度です。
裁量労働制の種類:
専門業務型裁量労働制
対象業務:研究開発、情報システム設計、記事の取材・編集、デザイナー、コピーライター等の専門性の高い19業務
導入手続き:労使協定の締結と労働基準監督署への届出
企画業務型裁量労働制
対象業務:事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査、分析を行う業務
導入手続き:労使委員会の設置・決議と労働基準監督署への届出
裁量労働制を導入するには厳格な要件があり、単に「残業代を削減するため」などの理由で安易に導入することはできません。また、健康・福祉確保措置の実施が義務付けられており、導入後も定期的な実態調査と制度の見直しが必要です。
4. テレワークと労働時間管理
テレワークにおける労働時間把握の方法
テレワークの普及により、労働時間管理の方法も変化しています。テレワークにおける労働時間把握の主な方法としては以下があります:
PCのログイン・ログアウト時間の記録
メリット:客観的な記録として残る
注意点:実際の作業時間との乖離が生じる可能性がある
業務支援ツールの利用状況記録
メリット:業務の開始・終了だけでなく、途中経過も記録できる
注意点:プライバシーへの配慮が必要
タイムカードアプリの活用
メリット:スマートフォンやPCから簡単に打刻できる
注意点:自己申告制の場合、実態との乖離の可能性
テレワークでも労働基準法上の労働時間規制は適用されるため、適切な労働時間管理が必要です。特に、長時間労働の防止と休憩時間の確保に留意しましょう。
中抜け時間の取扱いと休憩時間管理
テレワークでは、家事や育児、介護などのために「中抜け時間」が生じることがあります。この時間の取扱いについては、以下のような対応が考えられます:
労働から離れることが保障されている場合
休憩時間として扱う
時間単位の年次有給休暇として扱う(制度導入が必要)
柔軟な労働時間制度(フレックスタイム制など)の活用
終業時刻の繰り下げ
中抜け時間分、終業時刻を後ろにずらす対応
中抜け時間の取扱いについては、あらかじめ社内ルールを明確にし、従業員に周知しておくことが重要です。また、テレワーク中も労働基準法上の休憩時間(6時間超8時間以内の労働で45分以上、8時間超の労働で1時間以上)の確保が必要です。
ICTツールを活用した労働時間管理
テレワークの労働時間管理を効率化するICTツールの活用が進んでいます:
勤怠管理システム
クラウド型の勤怠管理システムでどこからでも打刻可能
労働時間の集計・分析機能により労務管理の効率化
アラート機能により長時間労働の防止
コミュニケーションツール
チャットツールのステータス表示(在席・離席・退席など)
Web会議ツールの利用状況
業務の進捗共有ツール
ICTツールを導入する際は、従業員のプライバシーに配慮し、過度な監視とならないよう注意が必要です。また、ツールの使用方法について十分な研修を行い、従業員の理解と協力を得ることが重要です。
5. 長時間労働対策と健康管理
時間外労働の上限規制と36協定の正しい締結方法
2019年4月からの働き方改革関連法施行により、時間外労働には原則として月45時間、年360時間の上限が設けられました(中小企業は2020年4月から適用)。
36協定の締結と届出:
労働者の過半数を代表する者(過半数組合または過半数代表者)との書面による協定
所轄の労働基準監督署長への届出
36協定に定める事項:
時間外・休日労働を行わせる必要のある具体的事由
対象業務、対象労働者の範囲
有効期間(最長1年)
延長できる時間数(月45時間、年360時間以内が原則)
特別条項付き36協定の場合の追加事項:
臨時的な特別の事情(具体的に記載)
延長できる時間数の上限(月100時間未満、複数月平均80時間以内、年720時間以内)
協定の有効期間
36協定は形式的に締結するのではなく、実際の業務量や人員配置を考慮した上で、現実的な時間外労働の上限を設定することが重要です。また、36協定の内容は労働者に周知する義務があります。
長時間労働者への医師による面接指導
労働安全衛生法では、長時間労働を行った労働者の健康障害防止のため、医師による面接指導が義務付けられています。
面接指導の対象者:
1ヶ月あたり80時間を超える時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められる者(本人の申出がある場合)
1ヶ月あたり100時間を超える時間外・休日労働を行った者(義務)
面接指導実施後の措置:
医師の意見を聴取
必要に応じて就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置
面接指導を実効性のあるものにするためには、労働時間を適正に把握し、対象者を確実に選定する仕組みが必要です。また、面接指導の結果を踏まえた措置を確実に実施することが、企業の安全配慮義務を果たす上でも重要です。
勤務間インターバル制度の導入と運用
勤務間インターバル制度は、前日の終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する制度です。働き方改革関連法では、この制度の導入は努力義務とされています。
導入のメリット:
十分な休息時間の確保による従業員の健康維持
疲労回復による生産性・安全性の向上
過重労働による健康障害リスクの低減
導入手順:
現状の労働時間や働き方の分析
制度の詳細設計(インターバル時間、対象者、例外規定など)
就業規則の変更
運用ルールの策定と周知
導入効果の検証と見直し
インターバル時間は、EU諸国では最低11時間が一般的ですが、日本では業種や企業の実情に応じて設定されています。導入にあたっては、業務の効率化や人員配置の見直しなど、労働時間削減のための取り組みと併せて進めることが効果的です。
6. 労働時間管理とトラブル対応
労基署調査でよく指摘される事項と対応策
労働基準監督署の調査(臨検)では、労働時間管理に関して以下のような事項がよく指摘されます:
労働時間の適正把握に関する指摘
実態:タイムカードと実働時間の乖離、自己申告制の不適切な運用
対応策:客観的記録による労働時間管理、「自己申告制ガイドライン」の遵守
36協定に関する指摘
実態:協定の未締結・未届出、上限時間超過、特別条項の濫用
対応策:適正な36協定の締結・届出、上限規制の遵守、特別条項発動時の手続き徹底
割増賃金に関する指摘
実態:計算方法の誤り、対象時間の過少カウント、除外すべきでない手当の除外
対応策:割増賃金計算の再確認、労働時間の適正把握、計算ツールの活用
労基署調査に対応するためには、日頃から適正な労働時間管理と記録の保存を行うことが重要です。また、定期的な社内監査を実施し、問題点の早期発見と改善に努めましょう。
残業代請求トラブルと予防法
残業代請求は、退職者からだけでなく、在職中の従業員から提起されるケースも増えています。
よくある請求内容:
みなし残業制度の無効による残業代不足分
管理監督者性の否定による割増賃金請求
労働時間の過少申告やサービス残業に対する未払賃金
予防策:
労働時間の客観的な記録と適正な管理
出退勤時刻の客観的な記録(タイムカード、ICカード、PCログなど)
業務指示と実態の乖離をなくす(「定時で帰れ」と言いながら過大な業務を課すなど)
固定残業代制度の適正な運用
労働条件通知書等での明示(金額と対応時間数)
固定残業時間を超えた場合の追加支払い
管理監督者の適正な範囲設定
名ばかり管理職の是正
適切な権限付与と処遇
残業代請求が提起された場合は、感情的な対応を避け、事実関係を冷静に確認した上で対応を検討することが重要です。また、未払いが発生している可能性がある場合は、早期に是正することでリスクを最小限に抑えることができます。
7. まとめ:持続可能な労働時間管理の実現に向けて
労働時間管理は、法令遵守という観点だけでなく、従業員の健康確保、生産性向上、優秀な人材の確保・定着という経営課題の解決にも直結する重要なテーマです。適切な労働時間管理の実現に向けて、以下の取り組みが重要です。
総合的なアプローチの必要性
制度面の整備
自社に適した労働時間制度の選択と導入
適正な36協定の締結と運用
客観的な労働時間把握システムの導入
業務効率化と組織改革
業務の棚卸しと無駄の排除
ITツールの活用による業務効率化
権限委譲と意思決定プロセスの見直し
意識改革と風土づくり
経営トップのコミットメントと率先垂範
管理職の評価基準へのタイムマネジメント視点の導入
「時間当たりの生産性」を重視する価値観の醸成
労務リスク管理としての労働時間管理
適切な労働時間管理は、以下のような労務リスクの予防にもつながります:
労働基準監督署からの是正勧告や罰則
未払い残業代請求リスク
過重労働に起因する健康障害と安全配慮義務違反による賠償責任
人材流出や採用難による事業継続リスク
これらのリスクを最小化するためには、コンプライアンス(法令遵守)の視点だけでなく、「従業員にとって働きやすい職場づくり」という積極的な視点で労働時間管理に取り組むことが重要です。
デジタル化時代の労働時間管理の展望
テレワークやワーケーションなど、場所や時間にとらわれない多様な働き方が広がる中、労働時間管理のあり方も変化しています。「在社時間」ではなく「成果」に基づく評価への移行や、ジョブ型雇用の広がりにより、今後は「労働時間の量」から「労働の質」に重点を置いた管理へと変化していくことが予想されます。
しかし、どのような働き方であっても、労働基準法の原則は変わらず、適正な労働時間管理と従業員の健康確保は使用者の責務です。法令の趣旨を理解し、形式的な対応ではなく、実質的に従業員の健康と働きがいを守る取り組みを進めていくことが重要です。
最後に
労働時間管理の改善は、一朝一夕には実現できません。現状分析から始めて、短期・中期・長期の目標を設定し、段階的に改善を進めていくことが大切です。また、定期的に効果を検証し、必要に応じて計画を修正していく柔軟な姿勢も重要です。
適切な労働時間管理が実現すれば、従業員の健康と働きがいが守られるだけでなく、生産性の向上や創造性の発揮、優秀な人材の確保・定着にもつながります。法的リスクを回避しながら、企業の持続的な成長を支える労務管理の基盤として、労働時間管理の改善に取り組んでいきましょう。
次回予告:労務管理実践編③ 「メンタルヘルス対策と休職・復職支援の実務」
次回は、労務管理実践編の第三回として、企業にとって重要性が増している「メンタルヘルス対策」について解説します。メンタルヘルス不調の予防から発見、適切な休職管理、そして円滑な職場復帰支援まで、企業の安全配慮義務を果たしながら従業員の健康を守るための実務ポイントを詳しく解説します。法的リスク回避と生産性維持の両立を図るための具体的なノウハウをお伝えしますので、どうぞお楽しみに!

「必要な時だけ社労士サービス」
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