社労士が解説:衝撃の事実!月平均所定労働日数と残業単価の関係性
- 代表 風口 豊伸
- 3月23日
- 読了時間: 6分
更新日:3月31日
はじめに
前回は「36協定編」として、時間外労働・休日労働を適法に行うために必須となる36協定について詳しく解説しました。今回は「残業単価編」として、月平均所定労働日数の変動が残業単価に与える影響と、それに伴う未払い残業代リスクについて解説します。
就業規則や賃金規程に「月平均所定労働日数」という記載がある企業が多いですが、実際にはこの数値が毎年変動しているケースが少なくありません。しかし、多くの企業ではこの変動を見落とし、給与計算システムの設定を更新していないため、知らず知らずのうちに未払い残業代が発生している可能性があります。このような事態は、労務管理上のリスクだけでなく、従業員満足度にも悪影響を与える重要な問題です。
目次
月平均所定労働日数とは何か:基本的な理解
月平均所定労働日数が変動する理由と影響
残業単価の計算方法と変動の実態
未払い残業代リスクの発見と対応
休日と休暇の違い:出勤日数を一定に保つ方法
まとめ:正確な残業単価計算のポイント
1. 月平均所定労働日数とは何か:基本的な理解
月平均所定労働日数とは、1ヶ月あたりの平均労働日数のことで、残業単価の計算に直接影響する重要な数値です。
月平均所定労働日数の基本的な考え方
月平均所定労働日数 = 年間所定労働日数 ÷ 12ヶ月
月平均所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月平均所定労働日数
多くの企業では、この数値を就業規則や賃金規程に明記しています。例えば「月平均所定労働日数:21日」「月平均所定労働時間:168時間(8時間×21日)」といった形で記載されることが一般的です。
2. 月平均所定労働日数が変動する理由と影響
変動する主な理由
暦の関係(年によって土日の数が変わる)
祝日の数や曜日の変動
閏年による年間日数の増加
会社カレンダーの変更(年末年始休暇、夏季休暇の設定など)
変動の実例
例えば、ある会社の年間所定労働日数が以下のように変動したとします:
2022年:252日(月平均21.0日)
2023年:250日(月平均20.83日)
2024年(閏年):253日(月平均21.08日)
この変動は小さく見えますが、残業単価の計算に直接影響します。問題は、多くの企業がこの変動を認識せず、給与計算システムの設定を更新していないことです。
3. 残業単価の計算方法と変動の実態
残業単価の基本計算式
残業単価 = (基本給 + 諸手当※) ÷ 月平均所定労働時間
※固定的に支払われる手当(役職手当、資格手当など)が含まれ、家族手当、通勤手当などは含まれない
月平均所定労働日数変動による残業単価への影響例
月給30万円(諸手当含む)、1日8時間労働の社員の場合:
2022年(月平均所定労働日数21.0日)の場合
月平均所定労働時間 = 8時間 × 21.0日 = 168時間
残業単価 = 300,000円 ÷ 168時間 = 1,785円(小数点以下切り捨て)
2023年(月平均所定労働日数20.83日)の場合
月平均所定労働時間 = 8時間 × 20.83日 = 166.64時間
残業単価 = 300,000円 ÷ 166.64時間 = 1,800円(小数点以下切り捨て)
2022年と2023年で比較すると、残業単価が15円増加しています。もし給与計算システムの設定が更新されず、2022年の残業単価のまま2023年の残業代を計算していた場合、15円×残業時間数分の未払い残業代が発生していることになります。
4. 未払い残業代リスクの発見と対応
リスクの発見方法
就業規則や賃金規程に記載されている月平均所定労働日数を確認
直近3年間の会社カレンダーから実際の年間所定労働日数を算出
給与計算システムに登録されている月平均所定労働時間の確認
実際の残業単価と支払われている残業単価の比較
リスクが発見された場合の対応
過去の未払い残業代の算出(通常、時効は3年間)
遡及支払いの検討(税務処理や社会保険料の調整も必要)
給与計算システムの設定更新
従業員への説明と理解促進
このような未払い残業代の問題は、単なる金銭的なリスクだけでなく、従業員の信頼を損なう可能性もあります。公正な対価が支払われていないと従業員が感じれば、仕事への満足度や企業へのロイヤリティが低下する恐れがあります。
5. 休日と休暇の違い:出勤日数を一定に保つ方法
月平均所定労働日数の変動を防ぐためには、休日と休暇の違いを理解し、適切に活用することが重要です。
休日と休暇の違いを理解していますか?
休日:労働義務がもともと存在しない日
休暇:本来は労働義務がある日に、特定の理由によって労働義務が免除される日
この違いを理解することで、年間出勤日数を一定に保つための効果的な方法が見えてきます。
年間出勤日数を一定に保つ方法
最も効果的な方法は、特別休暇制度の活用です。例えば:
基本的な休日設定(週休2日制など)を維持しつつ
閏年や祝日の変動によって出勤日数が増加する年には
「会社創立記念日」や「特別休暇」などの名目で休暇を設定する
この方法を採用すれば、年間出勤日数を毎年一定(例:250日)に保つことができます。結果として:
残業単価が年によって変動することがなくなる
給与計算システムの設定変更の手間が省ける
未払い残業代リスクを回避できる
従業員にとっても分かりやすい労働条件となる
6. まとめ:正確な残業単価計算のポイント
月平均所定労働日数と残業単価に関する実務上のポイントをまとめると:
月平均所定労働日数の変動を認識する
就業規則や賃金規程に記載されている数値を確認
実際の年間所定労働日数から計算し直す
変動が残業単価に与える影響を理解する
残業単価の適正計算
年度始めに月平均所定労働時間を再計算
給与計算システムの設定を更新
変動した残業単価を従業員に明示
年間出勤日数を一定に保つ工夫
休日と休暇の違いを活用
特別休暇制度の導入
年間カレンダーの戦略的な設計
未払い残業代リスクへの対応
定期的な残業単価の監査
過去の残業単価の適切性の確認
必要に応じた遡及清算の実施
月平均所定労働日数と残業単価の関係を正しく理解し、適切な対応を取ることは、コンプライアンス上の問題を防ぐだけでなく、従業員満足度の向上につながります。正確で公正な賃金支払いは、働きがいのある職場づくりの基本的な要素なのです。
次回予告:衝撃!残業単価に含めない手当とは
次回は「残業単価に含めない手当とはどのような手当てを言うのか」について詳しく解説します。名称だけでは判断できない衝撃の事実!あなたの会社の手当は実は残業単価に含める必要があるかもしれません。手当の性質による判断基準や、実務上の留意点について具体的に見ていきます。お楽しみに!

「必要な時だけ社労士サービス」
みなさんの会社で、顧問契約が本当に正しい選択であるのかを判断することは難しいと考えています。2025年に入って単発の相談が急増しております。弊社はそのご相談に関して、真摯に対応し少しでもお客様のお力になれる方法を模索し、このようなサービスを始めることを決定いたしました。
単発依頼は会社情報が不明でその登録から始める必要があることで、割高になりますが、年間手続き件数によっては経費削減が可能です。
これを機に顧問契約が正しい判断であるかの確認をしてみませんか?
Comments