「法改正についていけない」という不安を煽る営業トークの真実
- 代表 風口 豊伸
- 10月11日
- 読了時間: 7分
前回は、実際の費用比較で顧問契約と単発契約のコストパフォーマンスを検証しました。今回は、社労士事務所の営業でよく使われる「法改正対応」という切り札について掘り下げます。
「顧問契約を結ばないと、これからの労働社会保険の法改正についていけませんよ」
この言葉に不安を感じた経営者は多いのではないでしょうか。しかし、本当に顧問契約がなければ法改正に対応できないのでしょうか?情報化社会の現代において、この営業トークの実態を検証してみましょう。
目次
「法改正についていけない」という営業トークの背景
実際の法改正の頻度と影響範囲
現代の情報収集環境の実態
顧問契約での「法改正対応」の実態
単発契約でも十分対応可能な理由
1. 「法改正についていけない」という営業トークの背景
よく聞かれる説明
社労士事務所を訪問すると、こんな説明を受けることがあります:
「労働関係の法律は毎年のように改正されています」 「専門家でないと、何が変わったのか把握するのは困難です」 「対応を誤ると、労働基準監督署から指導を受けることもあります」 「顧問契約を結んでいれば、法改正があった時にすぐにお知らせします」
経営者が感じる不安
このような説明を聞いた経営者は、次のような不安を抱きます:
知らないうちに法律違反をしてしまうのではないか
労基署から指導を受けたらどうしよう
専門家の継続的なサポートがないと対応できないのではないか
法改正の情報をどうやって入手すればいいのかわからない
不安を煽る構造
この営業手法は、以下の心理を巧みに利用しています:
無知への恐怖:知らないことへの漠然とした不安
専門性の強調:「専門家でないと無理」という思い込み
リスクの過大評価:法律違反のリスクを必要以上に強調
情報の非対称性:経営者の情報不足につけ込む
2. 実際の法改正の頻度と影響範囲
法改正の実態
確かに労働関係の法律は毎年何らかの改正があります。しかし、その内容を分析すると:
大規模な法改正(企業対応が必要)
頻度:2~3年に1回程度
例:働き方改革関連法、育児介護休業法の大改正
影響:就業規則の変更、労使協定の締結など
中規模な法改正(一部企業のみ対応)
頻度:年1~2回程度
例:社会保険料率の変更、雇用保険料率の変更
影響:計算方法の変更、給与計算への反映
小規模な法改正(実務への影響が限定的)
頻度:年数回
例:様式変更、手続きの電子化推進
影響:提出書類の様式が変わる程度
スタートアップへの実質的影響
従業員数3~10名程度のスタートアップに実質的に影響する法改正は:
年間で対応が必要なもの:1~2件程度
緊急性が高いもの:ほとんどない(施行まで数ヶ月~1年の猶予あり)
専門家のサポートが必須:大規模改正時のみ
3. 現代の情報収集環境の実態
インターネットでの情報入手
現代では、法改正の情報は容易に入手できます:
公的機関の情報発信
厚生労働省のウェブサイト:法改正の詳細情報
労働局・労働基準監督署:地域別の説明会、リーフレット
日本年金機構:社会保険関連の改正情報
ハローワーク:雇用保険関連の改正情報
民間の情報サイト
社労士事務所のブログ・メルマガ(無料)
人事労務系の専門サイト
ビジネス系ニュースサイト
YouTubeなどの解説動画
情報の質と量
実は、インターネット上には顧問契約を結ばなくても入手できる情報が溢れています。
多くの社労士事務所が、集客目的で法改正の解説記事を無料公開しています。つまり、顧問料を払わなくても同じ情報が手に入るのです。
施行までのタイムラグ
法改正には必ず「公布」から「施行」までの期間があります:
大規模改正:1~2年前に公布
中規模改正:半年~1年前に公布
小規模改正:数ヶ月前に公布
つまり、法改正を知ってから対応するまでに十分な時間があるのです。
4. 顧問契約での「法改正対応」の実態
実際の「お知らせ」の内容
顧問契約を結んでいる企業への「法改正のお知らせ」は、実際にはどのようなものでしょうか:
典型的なパターン
メール配信:法改正の概要を記載したメール(A4で1~2枚程度)
ニュースレター:月1回程度の情報誌の郵送
説明会の案内:大規模改正時のセミナー案内
内容の実態
厚生労働省の資料をベースにした要約
インターネットで公開されている情報と同じ内容
個別企業の状況に応じた具体的なアドバイスは含まれていない
「お知らせ」の価値
顧問料を毎月支払って得られる「法改正のお知らせ」の実質的価値:
情報そのもの:無料で入手可能な情報と同じ
タイミング:厚生労働省の公表から数日~数週間遅れ
個別性:自社への具体的影響は自分で判断する必要がある
実際に必要なサポート
本当に必要なのは「情報」ではなく「対応の実行」です:
就業規則の変更が必要な場合の作成・届出
新しい労使協定の締結が必要な場合の作成・届出
従業員への説明資料の作成
これらは、顧問契約とは別に費用が発生することがほとんどです。
5. 単発契約でも十分対応可能な理由
情報収集の現実的な方法
顧問契約がなくても、以下の方法で十分に対応可能です:
無料で利用できる情報源
厚生労働省のメールマガジン:無料登録で法改正情報が届く
社労士事務所の無料メルマガ:多くの事務所が無料配信
各種セミナー・説明会:労働局主催の無料説明会
業界団体の情報:商工会議所、業界団体の会員向け情報
能動的な情報収集
年に数回、厚生労働省のサイトをチェック
気になる改正があれば、社労士に単発相談(弊社の場合:1時間5,000円)
対応が必要な場合のみ、単発で依頼
実際の対応フロー
法改正があった場合の現実的な対応:
情報入手(無料):メルマガやウェブサイトで概要把握
影響判断(自社で可能):自社に影響があるか検討
詳細確認(必要時のみ):社労士に相談(弊社の場合:1時間5,000円)
対応実行(必要時のみ):就業規則変更等を単発依頼
コスト比較
年間1~2件の法改正対応が必要な場合:
顧問契約
月額顧問料:17,500円×12ヶ月=210,000円
就業規則変更(別途費用):50,000円~
年間合計:260,000円~
単発契約
法改正相談:5,000円×2回=10,000円
就業規則変更:50,000円~
年間合計:60,000円~
差額:200,000円
「ついていけない」は本当か?
結論として:
法改正情報は無料で十分入手可能
施行まで十分な猶予期間がある
必要な時だけ専門家に依頼すれば対応可能
顧問契約がなくても「ついていけない」ことはない
まとめ
「法改正についていけない」という営業トークを検証した結果:
法改正情報は現代では無料で入手可能
顧問契約の「お知らせ」は公開情報と同じ内容
実際に必要なのは情報ではなく対応実行のサポート
単発契約でも十分に対応可能で、年間20万円の差額
「法改正についていけない」という不安は、情報の非対称性を利用した営業トークです。現代の情報化社会では、経営者自身が能動的に情報を収集することで、顧問契約なしでも十分に対応できます。
重要なのは、漠然とした不安に対して高額な固定費を支払うのではなく、本当に必要な時に適切なサポートを受けるという合理的な判断です。
次回は「36協定の実際の費用と頻度」について、具体的な数字で検証します。顧問契約の特典としてよく挙げられる「36協定無料作成」の実態に迫ります。
次回予告 「第4回:36協定は本当に『無料特典』なのか?年1回の手続きを冷静に分析」

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