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単発契約で社労士を上手に活用する5つのコツ

 前回は、企業規模別の最適な社労士活用法を検証し、ほぼ全ての企業で単発契約が有利という結論に至りました。今回は、実践編として「単発契約で社労士を上手に活用する具体的な方法」をお伝えします。

 「単発契約で本当に大丈夫?」「必要な時にすぐ対応してもらえる?」「顧問契約がないと優先順位が低くなるのでは?」

 こうした不安を持つ経営者の方も多いでしょう。しかし、適切な方法で活用すれば、単発契約でも十分に質の高いサービスを受けることができます。

目次

  1. 単発契約に対応している社労士事務所の見つけ方

  2. 初回依頼時に準備すべき情報と書類

  3. スムーズなやり取りのためのコミュニケーション術

  4. 自社でできることと社労士に任せることの線引き

  5. 長期的な関係構築のポイント

1. 単発契約に対応している社労士事務所の見つけ方

多くの社労士事務所は「顧問契約限定」

前回までに見てきた通り、多くの社労士事務所は:

  • ホームページに顧問契約料金のみ掲載

  • 単発業務を積極的に受けない方針

  • 「顧問契約がないと対応できない」という姿勢

このような事務所では、単発契約での質の高いサービスは期待できません。


単発契約歓迎の社労士事務所の特徴

ホームページでの見分け方

  • 単発料金表が明確に掲載されている

  • 「必要な時だけ」「スポット対応」などのキーワード

  • スタートアップ・中小企業向けを明示

  • 顧問契約を強制していない記載

サービス内容での見分け方

  • 単発手続き料金が明記されている

  • 手続き単位での料金設定が明確

  • 相談料金が時間単位で設定

  • オンライン対応可能


問い合わせ時の確認ポイント

  1. 単発対応の可否:「顧問契約なしでも対応いただけますか?」

  2. 料金の明確さ:「手続き費用を事前に教えていただけますか?」

  3. 対応スピード:「依頼から完了までどのくらいかかりますか?」

  4. 追加料金の有無:「提示された料金以外に費用は発生しますか?」


避けるべき社労士事務所の特徴

  • 単発料金を明示しない(「お問い合わせください」のみ)

  • 「顧問契約を前提に」という条件を付ける

  • 単発だと割高な料金設定

  • 対応が遅い、対応が悪い、または後回しにされる


探し方の具体的な方法

インターネット検索

  • 「社労士 単発 [地域名]」で検索

  • 「社労士 スポット対応」で検索

  • 検索結果のホームページで料金表を確認


口コミ・紹介

  • 同じ規模の経営者仲間に聞く

  • スタートアップコミュニティで情報収集

  • SNSでの評判を確認


初回の見極め

  • 問い合わせ時の対応の早さ

  • 説明の明確さ

  • 押し売り感がないか

  • 相談しやすい雰囲気か

重要:弊社のように「必要な時だけ社労士サービス」を明確に打ち出している事務所を選ぶことが成功の鍵です


2. 初回依頼時に準備すべき情報と書類

初回手続きで必要な会社情報

社労士が会社情報を登録するために必要な情報:

基本情報

  • 会社名(正式名称)

  • 所在地

  • 代表者氏名

  • 電話番号・メールアドレス

  • 事業内容

  • 設立年月日


労働保険・社会保険関連

労働保険

  • 労働保険番号(取得済みの場合)

  • 業種(事業の種類)

  • 前年度の概算保険料

  • 保険関係成立年月日(設置年月日)

  • 雇用保険適用事業所番号

  • 雇用保険適用年月日

  • 2元適用事業所の場合:労災保険と雇用保険の両方の番号

社会保険

  • 社会保険適用事業所番号(取得済みの場合)

  • 適用年月日

  • 厚生年金保険事業所整理記号

  • 健康保険事業所整理記号

その他

  • 就業規則(作成済みの場合)

  • 雇用契約書のひな型


従業員情報

  • 氏名(読み仮名含む)、生年月日、住所

  • マイナンバー

  • 基礎年金番号

  • 雇用保険被保険者番号(前職がある場合)

  • 雇用形態(正社員、契約社員など)

  • 給与額

  • 勤務開始日


手続き別の必要書類

社会保険・雇用保険の資格取得

  • 雇用契約書または労働条件通知書

  • マイナンバー確認書類

  • 基礎年金番号が分かる書類(年金手帳など)

  • 扶養家族がいる場合:家族の情報


退社手続き

  • 退職日

  • 退職理由

  • 離職票が必要かどうか

  • 最終月の給与情報


36協定

  • 前年度の36協定書(更新の場合)

  • 今年度締結する36協定書の写し

  • 労働時間制度(通常の労働時間制、変形労働時間制など)

  • 時間外労働の上限設定

  • 労働者代表の氏名


事前準備のチェックリスト

初回依頼をスムーズに進めるために:

 □ 会社の基本情報を整理している

 □ 従業員の個人情報を収集している

 □ マイナンバーの管理体制ができている

 □ 給与計算の方法が決まっている

 □ 労働時間制度が明確になっている

 □ 雇用契約書のひな型がある

準備が整っていればいるほど、初回手続きがスムーズに進み、費用も抑えられます


3. スムーズなやり取りのためのコミュニケーション術

依頼時の明確な伝え方

良い依頼の例

「従業員1名の社会保険・雇用保険の資格取得手続きをお願いしたいです。入社日は○月○日です。必要な書類は何でしょうか?費用と納期を教えてください。」

ポイント

  • 何を依頼したいか明確

  • 必要な日程を提示

  • 費用と納期の確認

避けるべき依頼の例

「従業員を雇うんですけど、何か手続きが必要ですよね?よろしくお願いします。」

問題点

  • 具体性がない

  • 期限が不明

  • 社労士側で確認事項が増える


質問の仕方

効率的な質問

「36協定の有効期間は1年間でしょうか?毎年更新が必要ですか?」

良い点

  • 具体的で明確

  • Yes/Noで答えやすい

  • 追加の質問も明確

非効率な質問

「36協定について教えてください」

問題点

  • 範囲が広すぎる

  • 何を知りたいか不明

  • 長時間の説明が必要になる


情報提供のコツ

まとめて提供する

  • 必要な情報をExcelやスプレッドシートで整理

  • メール1通で完結させる

  • 添付ファイルは分かりやすく命名


避けるべき方法

  • 情報を小出しにする

  • 何度もメールのやり取りをする

  • 口頭だけで伝える


レスポンスの早さ

単発契約でも良好な関係を築くために:

  • 社労士からの質問には24時間以内に返信

  • 書類の提出は期限を守る

  • 確認事項があれば早めに相談

単発契約でも、やり取りがスムーズなクライアントは手続きも素早く処理されます


4. 自社でできることと社労士に任せることの線引き

自社でできること

情報収集

  • 労働保険・社会保険の基礎知識

  • 厚生労働省のウェブサイトで最新情報確認

  • 必要な手続きの概要把握

書類の準備

  • 従業員情報の整理

  • 雇用契約書の作成

  • 給与計算の基礎データ

簡単な相談

  • インターネットで調べれば分かる基本的な事項

  • 行政機関の窓口での相談(無料)


社労士に任せるべきこと

専門的な判断が必要な事項

  • 複雑な労働時間制度の設計

  • 変形労働時間制の導入

  • 特殊な雇用形態の労務管理

手続きの実行

  • 労働保険・社会保険の各種届出

  • 労働基準監督署・ハローワークへの提出

  • 電子申請の代行

トラブル対応

  • 労働基準監督署からの指導への対応

  • 従業員とのトラブル

  • 法令違反のリスク確認


コスト削減のための工夫

相談前の自己学習

無料で相談できる時間を有効活用するために:

  • 基本的な用語は事前に調べる

  • 質問を箇条書きで整理

  • 優先順位をつける

年間スケジュールの把握

定期的に発生する手続きを把握:

  • 4月:労働保険年度更新の準備

  • 6月:労働保険年度更新

  • 7月:算定基礎届

  • 3月:36協定の更新(4月に締結していた場合)

事前に準備しておけば、慌てずに対応できます。


テンプレートの活用

2回目以降の手続きのために:

  • 初回の書類をテンプレート化

  • 従業員情報のフォーマット統一

  • 提出書類のチェックリスト作成


5. 長期的な関係構築のポイント

単発契約でも継続的な関係は可能

顧問契約がなくても、良好な関係を築くことで:

  • 優先的に対応してもらえる

  • 料金の相談がしやすくなる

  • 緊急時にも対応してもらいやすい


信頼関係を築く方法

約束を守る

  • 書類提出の期限を守る

  • 支払いを遅延しない

  • 連絡したら必ず返信する

感謝を伝える

  • 手続き完了後にお礼のメールを送る

  • スムーズな対応に対して感謝を表明

  • 年末年始などの挨拶

定期的なコンタクト

  • 年に1回程度、会社の近況を報告

  • 新しい取り組みについて相談

  • 法改正があった時に質問


避けるべき行動

過度な値下げ交渉

  • 最初から値切る

  • 他の事務所と比較して圧力をかける

  • 正当な料金を支払わない

無理な要求

  • 即日対応を強要する

  • 深夜・休日の対応を求める

  • 専門外の業務を依頼する

一方的な関係

  • 困った時だけ連絡する

  • 感謝の言葉がない

  • 社労士を下請けのように扱う


複数の社労士との関係

単発契約の利点を活かして:

メイン社労士を決める

  • 基本的な手続きは同じ社労士に依頼

  • 会社の状況を理解してもらう

  • 継続的な関係を築く

専門分野で使い分け

  • 助成金に強い社労士

  • 労務トラブルに強い社労士

  • 特定業種に詳しい社労士

柔軟な使い分けが単発契約の最大のメリット


将来的な顧問契約への移行

事業が成長して、年間入退社が各20名を超えるようになったら:

  • 顧問契約への切り替えを検討

  • それまでの関係が活きる

  • スムーズに移行できる

ただし、ほとんどの企業は単発契約のままで十分です


まとめ

単発契約で社労士を上手に活用する5つのコツ:

  1. 単発契約歓迎の社労士事務所を選ぶ

    • 料金表が明確

    • 「必要な時だけ」を明示

    • 押し売りがない

  2. 初回依頼時の準備を万全に

    • 会社情報を整理

    • 従業員情報を収集

    • 必要書類を把握

  3. スムーズなコミュニケーション

    • 依頼内容を明確に

    • 情報をまとめて提供

    • レスポンスを早く

  4. 適切な線引き

    • 自社でできることは自社で

    • 専門的な判断は社労士に

    • コスト意識を持つ

  5. 長期的な信頼関係の構築

    • 約束を守る

    • 感謝を伝える

    • 適度なコンタクトを維持


 重要なのは、単発契約だからといって一回限りの関係と考えないことです。良好な関係を築けば、顧問契約がなくても質の高いサービスを受けられます。

 また、「必要な時だけ社労士サービス」を提供する弊社のような事務所を選ぶことで、安心して単発契約を活用できます。

 次回は、これまでのシリーズを総括し、「本当に必要な労務管理とは何か」について考察します。

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