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手続きだけでは終わらない〜単発依頼で見つかる法令リスク〜

 前回は、お客様の利益を最優先し、依頼をお断りした事例をご紹介しました。今回は、入退社手続きのご依頼をきっかけに、思わぬ法令違反が発覚した事例をお伝えします。単発手続きは、単なる書類作成の代行ではありません。手続きを通じて企業の実態を把握し、法令リスクを発見し、適切なアドバイスを行うことも、弊社の重要な役割です。

目次

  1. 入退社手続きでのヒアリング

  2. 「36協定って何ですか?」

  3. 5社で発覚した36協定未提出

  4. 36協定未提出のリスク

  5. 単発手続きだからこそできること

  6. 次回予告

1. 入退社手続きでのヒアリング

 弊社では、入社手続きや退社手続きのご依頼をいただいた際、単に書類を作成するだけではありません。必ず、企業の労務管理の実態をお伺いするようにしています。


具体的には、以下のような質問をさせていただきます。

  • 「従業員の方は、時間外労働(残業)をされていますか?」

  • 「労働時間はどのように管理されていますか?」

  • 「賃金の計算方法を教えていただけますか?」

  • 「就業規則は作成されていますか?」


 これらの質問は、手続きそのものには直接関係ないように見えるかもしれません。しかし、労務管理の全体像を把握することで、潜在的な法令違反や未払賃金のリスクを発見できる可能性があります。

 特に重要なのが、時間外労働(残業)の有無です。


2. 「36協定って何ですか?」

 あるスタートアップ企業から、新たな従業員の雇用に伴う社会保険・雇用保険の加入手続きをご依頼いただきました。

 すでに数名の従業員を雇用されている企業でしたが、事業拡大に伴い新しいメンバーを迎えるとのことでした。


 手続きの準備を進める中で、私は経営者の方にお聞きしました。

「従業員の方に、残業をしていただくことはありますか?」

「はい、繁忙期には残業をお願いすることがあります。」

「承知しました。では、36協定届は労働基準監督署に提出されていますか?」


 経営者の方は、少し困惑した表情で答えられました。


「36協定...ですか?それは何でしょうか?」

 

この瞬間、私は気づきました。この企業では、36協定を提出せずに時間外労働をさせている状態にあると。


3. 5社で発覚した36協定未提出

 実は、この事例は決して珍しいものではありません。

 弊社が単発手続きのご依頼を受けた企業のうち、これまでに5社で36協定の未提出が判明しています。

 36協定(サブロク協定)とは、労働基準法第36条に基づく「時間外労働・休日労働に関する協定届」のことです。従業員に法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いてもらう場合、または法定休日に働いてもらう場合には、この36協定を労使間で締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

 しかし、多くの経営者の方が、この36協定の存在そのものを知らないのです。


「うちは残業代をちゃんと払っているから大丈夫」


 そう思われている経営者の方も多いのですが、残業代の支払いと36協定の提出は別の問題です。たとえ残業代を適切に支払っていても、36協定を提出せずに時間外労働をさせることは、労働基準法違反となります。


5社の共通点は、以下の通りでした。

  • 従業員数が10名未満のスタートアップ企業または零細企業

  • 顧問社労士がいなかった

  • 36協定の存在を知らなかった

  • 残業代は支払っていたが、届出は未提出

  • 「違法状態だったとは知らなかった」と驚かれていた


4. 36協定未提出のリスク

36協定を提出せずに時間外労働をさせることには、以下のようなリスクがあります。


(1)労働基準法違反

 36協定なしで時間外労働をさせることは、労働基準法第32条違反となります。違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。


(2)労働基準監督署の調査リスク

 労働基準監督署の臨検(調査)が入った際、36協定の未提出が発覚すると、是正勧告を受けます。悪質な場合には、書類送検される可能性もあります。


(3)従業員とのトラブル時のリスク

 従業員との間でトラブルが発生し、労働基準監督署に申告された場合、36協定の未提出が発覚します。このような法令違反があると、他の労務管理の問題も徹底的に調査される可能性が高まります


(4)企業の信頼性への影響

 取引先や金融機関から労務管理の状況を問われた際、基本的な届出すら行っていないことが分かれば、企業の管理体制に対する信頼を損なう可能性があります。


5. 単発手続きだからこそできること

 ここで改めてお伝えしたいのは、単発手続きは単なる書類作成の代行ではないということです。

 弊社では、手続きのご依頼をいただく際に、必ず企業の労務管理の実態をヒアリングします。そして、潜在的な法令リスクがあれば、経営者の方にお伝えし、適切な対応をご提案します。

 5社の事例では、いずれも36協定の未提出をお伝えしたところ、すぐに作成・届出のご依頼をいただきました。


 「知らなかったとはいえ、法律違反をしていたなんて...。教えていただいて本当に良かったです。」


 多くの経営者の方から、こうした感謝の言葉をいただきました。

 顧問契約がなくても、単発手続きのご依頼を通じて、企業の法令遵守をサポートすることは十分に可能です。むしろ、手続きの都度、経営者と直接やり取りをすることで、その時点での課題や リスクを的確に把握できるとも言えます。

 また、弊社では36協定届の作成に際して、単なるひな形の提供ではなく、企業の実態に合わせたカスタマイズを行っています。


  • 業種や職種に応じた適切な時間外労働の上限設定

  • 特別条項の必要性の判断

  • 労使協定の適切な締結方法のアドバイス

  • 今後の労働時間管理についての助言


これらすべてを含めて、単発手続きのサービスとして提供しています。


6. 次回予告

 次回は、第1部のまとめとして、これまでご紹介した事例から見えてきた共通点についてお話しします。

  • 依頼を受けなかった事例

  • 36協定未提出が発覚した事例

 これらの事例に共通するのは、「単発手続きは単なる書類作成ではない」ということです。

 お客様の利益を最優先すること、法令リスクを見逃さないこと、必要な時に適切なサポートを提供すること。これらが、弊社の考える「必要な時だけ社労士サービス」の本質です。

次回は「実例から見えた『必要な時だけ社労士』の実態」と題して、第1部の総括をお届けします。

 その後、第6回からは、多くの方が気になっているであろう「すでに顧問契約している企業はどうすれば?」という疑問にお答えしていきます。

 実は、弊社には顧問契約中の企業からも多くのご相談が寄せられています。手続きミス、対応の遅さ、料金の不透明さ、労使トラブルへの対応力不足...。

 顧問契約を結んでいても、満足できるサービスを受けられていない企業が、想像以上に多いのです。

 次回もぜひご覧ください。



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弊社では、「必要な時だけ社労士サービス」を展開中。

 本当に必要だと思ったときに、単発にてお手続きの代行をさせて頂きます。

 顧問契約を結ぶほどじゃないとお考えの経営者様に寄り添ったサービスと自負しております。


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